広辞苑「還暦」 赤いカバーの特別版
代表的な国語辞典として親しまれてきた『広辞苑』(岩波書店)が今年、第1版の刊行から60年を迎えた。“還暦”を記念し、今月から赤いカバーの特別版を販売。「百科事典の機能を備えた一般向けの国語辞典」は、時代に寄り添いながら、進化を続けている。
『広辞苑』の第1版は昭和30年5月に刊行。戦前の国語辞典『辞苑』の改訂版だったが、戦争の混乱に加え、戦後は新仮名遣いへの移行や新語が激増したため、編者の新村出(しんむら・いずる)氏らによる改訂作業には20年を要した。その後5度改訂され、平成20年の第6版では約24万語を収録している。
同社辞典編集部の平木靖成副部長は「言葉は移り変わる。そうしたなかで日本語のデータベースとしての精度を高めることを常に意識しています」。第6版では「ラブラブ」「いけ面」など約1万語を追加。改訂のたびにこうした新語が注目されるが、実は既存の用語を見直し、現代人が受け入れやすい説明に変えたり、新たな用法や意味を追加することが作業の基幹。現在進行中の第7版の改訂には200人以上の専門家が監修に関わっている。
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辞典づくりに魅せられた人々を描き、本屋大賞を受賞した三浦しをんさんの『舟を編む』(光文社)のための取材も受けた平木さん。「あの小説のおかげで僕らの仕事もだいぶ理解してもらえるようになった」と喜ぶ。
一方で、発行部数は昭和58年刊行の第3版260万部をピークに減少傾向が続く。電子辞書の普及もあって3千ページ以上もある辞典を買う人は減ったが、「紙の辞書では目的の言葉以外の、まだ知らない言葉に出合うことができる」と平木さんは言う。
SNSの普及で次々に新しい言葉が生まれ、ネット検索で膨大な情報が得られる時代だからこそ、簡潔な言葉で的確に、言葉の意味や用法が分かる辞典の価値は見直されつつあるのかもしれない。(戸谷真美)
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