2020年4月6日 星期一

富士山「大規模噴火なら3時間で首都機能マヒ」国の検討会

富士山「大規模噴火なら3時間で首都機能マヒ」国の検討会

2020年3月31日 14:14NHK NEWS
富士山で大規模な噴火が発生した場合、3時間ほどで首都機能がマヒするおそれがあることが国の検討会のシミュレーションで明らかになりました。専門家は「噴火後の対応では間に合わず、今のうちから対策を考えておく必要がある」としています。

1707年の12月、富士山で2週間余り続いた「宝永噴火」と同規模の噴火が発生し、今の首都圏に火山灰が集中して降った場合、都市機能はどうなるのか。国の検討会がシミュレーションしました。

火山灰は噴火からわずか3時間で、神奈川県や東京の都心、千葉県、埼玉県にまで達し、微量の火山灰によって各地の鉄道の運行システムに不具合が発生、運行が停止するということです。

さらに視界の悪化により車の通行が困難となって、首都圏の広い範囲で交通機関がマヒするおそれがあるとしています。これによって人の移動が制限されて出勤や帰宅が困難となるほか、物流が滞って水や食料が不足するおそれがあるということです。

雨が降っている場合には、電気設備に火山灰が付着し東京の都心でも停電するおそれがあるほか、通信や上下水道が使えなくなるおそれもあります。

富士山は300年余り前の宝永噴火を最後に噴火しておらず、活動の予測は難しいとされています。

専門家「予測困難 危機管理の体制を」

検討会の主査で東京大学の藤井敏嗣名誉教授は富士山の噴火について「長い目でみれば富士山は30年に1回程度噴火が発生していて、いつ噴火が発生してもおかしくない状態だ」と指摘しています。

一方で噴火がいつ発生するかについては「およそ300年間噴火がなく観測データがないため発生や噴火後の経過を事前に予測するのは難しい」としています。

対策について藤井名誉教授は「東京には経済機能や政治機能が集中していて噴火が発生してからの対策では間に合わない。交通機関の専門家はマヒを最小限にとどめるための検討を進める必要があるほか、噴火直後に対応できる専門家集団による危機管理体制づくりを進める必要がある」と話しています。

シミュレーションの詳細

富士山で大規模な噴火が発生し大量の火山灰が降ると高度に開発が進んだ都市にどのような影響が出るのか。世界的に事例はなく、国の検討会は過去に富士山で起きた大規模噴火の記録をもとにシミュレーションしました。想定したのは、首都圏の人口密集地域に火山灰が降る、西南西の風が強く吹いた場合です。

<噴火3時間で首都機能マヒ>
噴火発生から3時間後。微量の火山灰が神奈川県や東京の都心、千葉県、埼玉県にまで達します。

この範囲では鉄道が止まって車の通行が困難となり、移動手段が徒歩に制限されます。雨が降っている場合には、広い範囲で停電が発生して首都機能がマヒするおそれがあるとしています。

<噴火1日後も影響続く>
噴火発生から1日後。鉄道は東京のほぼ全域で止まり、車の通行も広い範囲で困難なままで、物流が滞って店舗などの営業が困難になり水や食料が不足するおそれがあります。雨が降っている場合の停電も東京の都心を中心に続き、停電による断水、通信障害なども起きるおそれもあります。

<15日後も機能マヒ続く>
2週間余り噴火が続いた「宝永噴火」を元にしたシミュレーションでは、その後も影響範囲を広げながら火山灰が降り続くとしていています。

噴火後15日目には、鉄道が止まる範囲は首都圏のほぼ全域に。雨が降っている場合の停電は、神奈川、東京、埼玉、千葉の都市部のほぼ全域で発生します。国の検討会は、火山灰の影響が首都圏の広い範囲におよべば、長期間にわたって社会的な混乱が起きるとしています。

<噴火予測困難 どう備える>
富士山の大規模な噴火について国の検討会は「発生のタイミングや降灰の影響範囲を噴火前に確実に予測することは困難」としています。

そこで検討会が必要性を指摘しているのが、国や事業者などが今回のシミュレーションを参考にとるべき防災対応をあらかじめ定めることです。そのうえで、実際に大規模噴火が発生したときに速やかに防災対応をとることで被害や社会的混乱を軽減することは可能だとしています。

火山灰 都市に深刻な影響

専門家はわずか数ミリの火山灰でも広い範囲に降れば都市には深刻な影響が出ると指摘します。

<鉄道は微量で運行停止に>
国の検討会の委員の山梨大学の秦康範准教授によりますと、まず、火山灰の影響を受けるのが「鉄道」です。都市部の鉄道はレールと電車の間を流れる電気から電車の位置を把握していますが、わずかな量でも灰がレールに積もると、位置がわからなくなり運行が止まるということです。

秦教授は「広範囲で鉄道が止まってしまうと、何十万、何百万という人が滞留する。復旧もすぐには難しく、影響は極めて大きい」と指摘しています。

<視界不良で渋滞も発生>
影響は「道路」にも。視界が悪くなったり積もった火山灰でブレーキが効きにくくなったりして車のスピードが落ち、大渋滞が発生するということです。

<物流も途絶える>
鉄道の運行停止や道路の渋滞で深刻な影響が出るのは「物流」です。秦准教授は「都市は物流で支えられている。コンビニは1日に何回も配送することであれだけの多くの商品をそろえているが供給が途絶えればすぐになくなる。物流の確保も大きな課題だ」と話しています。

<雨と火山灰でさらに影響大>
火山灰が積もる中で雨が降った場合はさらに影響が大きくなります。変電所など電気設備で漏電が発生し停電が懸念されるほか、通信設備に不具合が発生し携帯電話が使えなくなことも考えられるということです。

わずかな量であっても都市のあらゆる機能に影響を及ぼす火山灰について、秦准教授は「火山灰の影響のない範囲に移動しようとしても、鉄道や道路が止まっていれば難しくなる。噴火の発生後、数時間で都市機能がマヒするおそれがあり、おのおのの家庭では1週間分かそれ以上の備蓄を進めてほしい」と話していました。

江戸時代の「宝永噴火」とは

富士山の「宝永噴火」は今から300年余り前の江戸時代中期、1707年12月16日から始まった噴火で、よくとし1月1日まで続きました。

大量の火山灰が噴き出たのが特徴で、ふもとの村では3メートル、江戸でも数センチの灰が積もりその量は合わせて17億立方メートルに達しました。これは9年前に発生した東日本大震災による災害廃棄物、4600万立方メートルの37倍に相当します。

富士山の周辺では大量の火山灰で家屋の倒壊や農地が埋まるなどの被害が出たほか、流れ出した灰による土砂災害や洪水が長期間にわたり発生しました。

その後富士山では噴火は発生していませんが火山の専門家は、過去の周期などから将来的に噴火が発生する可能性は高いとしています。



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